コラム回心転意
「片方」ではなく「両方」活用!新NISAと保険の組み合わせ
2024年1月から新NISAがスタートし、投資・運用ブームが続いています。
そんな中、新NISAで運用すれば死亡保険や医療保険は不要だ、と考える人が専門家も含めて増えているようです。
FPに相談したところ「保険なんてやめて、その分新NISAで運用に回すべき。将来的に利益が出せるのだから、医療費や万一の死亡時の費用はそこから出せばよい。」と言われた、というご相談者もいらっしゃいました。
お金の使い方に対する考え方は人それぞれなので完全に否定はしません。が、備えのすべてを運用一辺倒で行うというのもやや短絡的であると言えるでしょう。特に最近の不安定な株式市場の動きを見ていると、なおさらそのように感じます。
資産形成と万一の保障の確保は別々に行った方が、実は様々な面で効率が良いのです。
今回は新NISAと保険、「どちらか」ではなく「どちらも」活用し将来へ備えましょう、というお話です。
目次
新NISAと保険、それぞれの特長とは?
新NISAは国内の個人投資を促すべく、資産運用をサポートするためにつくられた制度です。
最大のメリットはつみたてと成長の投資枠合わせて保有額1,800万円までの運用益が期間無制限で非課税になるという点でしょう。
短期的、長期的投資どちらでも活用でき、投資初心者にも比較的分かりやすい仕組みが取られています。
しかし当然ながら、株式投資・投資信託であることには変わりはないため運用成果が悪ければ元本割れ等のデメリットを負う「リスク」があります。
保険は予期せぬ出来事に備えるための「保障」としての特性が強い商品です。
家族がいる人やローンを抱えている人にとって、万が一の際に家族の生活を守るための「保障」は欠かせません。
生命保険や医療保険は事故や死亡、病気といった万一の事態に対する金銭的な支え=安心を提供するもの。そのために「リスク」を排し金額や期間が確定された「保障」を得るための手段が保険であると言えます。
貯蓄や運用機能を備えた保険も多く販売されていますが、基本的に「保障」の部分にリスクが発生しないように作られています。
新NISAの長所と短所
将来に備えるための資産形成として、投資・運用は有効な手段と考えられます。
特に新NISAは非課税枠の金額、期間の恩恵が大きいため、活用すれば効率的な投資・運用を行うことができます。
非課税枠以外にも、開設した金融機関が用意した投資先(上場株式や投資信託)を自由に選択出来ること、利益確定や資金の引き出しも自由に行えることなど、流動性、柔軟性に優れているのも特長です。
資産運用の際には是非利用すべきでしょう。
しかし一方で、「保障」を準備するためには向いていません。
その主な理由は以下の通りです。
①運用成果が不安定であること
資金が必要になったときに望ましい運用成果が出せているとは限らず、価格が暴落していることも考えられます。
②資産形成にはある程度の時間が必要になること
運用を開始して間もない時期では、万一の時に十分な資金を準備できない可能性があります。
③資産の管理は原則、その資産の持ち主本人にしかできないということ
特に、死亡により相続財産の対象になると相続の手続きが完了するまでは引き出せなくなることには要注意。
保険の長所と短所
保険の場合は新NISAとは逆に「保障」の金額が加入時に確定しています。
必要な時に決まった金額を受け取れることに加え、加入して間もなく保険を使うような事態が起きても想定通りの金額を確保することができます。
また、保険金の手続きや受取についても以下のようなメリットがあります。
①代理請求の制度がある
自分自身で手続きできないときでも家族が代わりに請求手続きを行うことができます。
②死亡保険金は指定している受取人に支払う
受取人は相続の手続きを待つことなく保険金を受け取ることができます。
一方、資産運用における効率は新NISAには及びません。
終身保険などの貯蓄性のある商品でも(預貯金よりは良いものの)リスクが少ない分効率的にお金を増やすことは出来なくなっています。
保険商品にも投資信託等を用いた資産運用型の商品がありますが、保険の機能を維持するための費用(=保険関係費用)や短期で解約した場合に差し引かれる費用(=解約控除)など、運用以外の費用が掛かるため、新NISAに比べ運用効率が悪いと言わざるを得ません。
もちろん、運用益に対する非課税枠もありません。
「相互補完」で準備するのがベスト
新NISAと保険の目的は以下のようにまとめることができます。
新NISA:「リスク」を負いつつ効率的に資産形成を行う
保険:必要な「保障」を確実に用意する
資産形成は将来への備えとしてとても重要ですが、予期せぬリスクへの「保障」としてはやや不安があります。
そこで保険を併用し「保障」を備えながら資産形成を進めることが有効となります。
投資を始めて資産形成が十分に出来ていないなら保険に加入しておき、運用成果が表れるまでの「保障」とする。
成果が出せた時にご自分の経済状況や家族状況を踏まえて見直してみて、保険が不要と判断できれば解約してしまっても良いですし、やっぱり必要だと考えれば継続するのも自由です。年齢が若い時に加入していれば、継続を選択しても保険料の負担は安く抑えられます。
「リスク」と「保障」を相互に補完できるようにバランスよくお金を振り分けることで経済的、心理的な安心感を得ることが可能です。
特に「心理的な安心感」は投資に対して積極的な姿勢を取り続けられるようになるため、結果として長期的な資産形成を成功させるための土台となるでしょう。
まとめ
新NISAによる資産形成は非常に有効ですが、最初に書いた「新NISAがあるから保険は不要」という結論は行き過ぎていると感じています。
それだけに依存するのではなく、保険を併用することでリスクに備えつつバランスの取れた資産形成が可能となります。
大切な家族や自分自身を守るためにも、保障と資産形成の両面をしっかりと考えた備えを行いましょう。