コラム回心転意
「リスクの高い保険」勧められたときは?
ここまで、「リスクの高い保険」の外貨建て保険、変額保険がどのような保険なのかを見てきました。
最後に、実際にこれら「リスクの高い保険」を銀行や保険代理店で勧められたときに、内容を理解するポイントを確認していきましょう。
まず基本的なこととして、自分が勧められている商品が何なのかを確認しましょう。
「保険を勧められているという話なのに、わざわざ「保険」かどうか確認するの?」
と思われるかもしれませんが、実は「リスクの高い保険」の契約に関するトラブルの中で、意外にも
「預貯金や運用だと認識していて、「保険」だとは思わなかった」
という内容のものが発生しています。
つまり残念ながら、契約した商品の種類をそもそも理解していない人が多い、ということになります。
販売側にも原因があり、「貯蓄としての機能に偏って説明」するなど、誤認を誘発している事例や、「商品知識の不足」から、顧客に対して「商品内容の分かりやすい説明」が出来ていないケースなどがあることが考えられるでしょう。
また、提案や契約をする際の状況下で誤認することも有り得ます。
例えば銀行で「保険」の提案をされたり、契約をする場合、今でこそ「銀行による保険販売」がだいぶ浸透してきていますが、それでも「銀行=預金」という固定観念から、自分が勧められている商品が「保険」であるとの考えに至らないケースもあるようです。
まず最初の時点で認識を誤らないよう、勧められている商品が「預貯金」「投資」「保険」のどれに当たるのか、しっかりと確認してから、細かい説明を聞くと良いでしょう。
保険に限らず、金融商品の購入においては、「商品のどこにリスクがあるのか」は必ず確認したいポイントですが、特に「リスクの高い保険」の場合、この「保証される部分」を誤認してしまうケースが多いように見受けられます。
例えば、外貨建て保険の場合、金額が保障されるのは「外貨での」保険金・解約返戻金等ですが、「円で受け取る場合の」保険金・解約返戻金も保証される、と誤認してしまうケースがあります。
さらに変額保険では、金額が保証されるのは「死亡等の」保険金ですが、運用により将来受け取れる金額が、この「保険金と同じ金額を約束されている」と誤認してしまうケースもあります。
いずれの場合も、実際にお金を受け取った際に、見込んでいたよりも少ない金額になってしまう可能性が高く、「契約しなければよかった」と後悔することになってしまいます。
上記の例では、予め知識があれば防げそうな誤認ではありますが、一般消費者である皆さまにとって厄介なのは、現在販売されている各保険商品がより複合化・複雑化しているという点です。
ここまで、「リスクの高い保険」の代表例である外貨建て保険、変額保険の仕組みを紹介してまいりましたが、それらはあくまで基本的な仕組み、一般例に過ぎません。
現在販売されている(または今後販売されるであろう)保険商品の中には、外貨建て保険と変額保険を組み合わせた保険や、普通の保険に部分的に組み込んだ保険が出てきており、一見すると非常に分かりにくくなっています。
特にこういった保険の契約を検討する場合、「保証」されるものが何なのかをしっかり理解することは必要不可欠です。
ちなみに、このことは「保険」に限りません。
例えば、外貨預金は預金保険制度(*9)の対象外である等、円の「預貯金」と同じ認識でいると、勘違いをしてしまいそうな制度の違いが多くありますので、特に資産運用に慣れていない方は、金融商品の購入の際には必要な確認事項と言えます。
リスク・デメリットを確認したうえで、それを「受け入れることができるかどうか」をよく検討し、契約するようにしましょう。
保険料の支払い(=積立)についても、以下の点を確認しましょう。
・保険料払込期間・・・60歳、65歳、5年、10年etc.
=いつまで保険料の支払いを行うのか(=積立期間)
・保険料の払方・・・月払、年払、口座引落、クレジットカード払etc.
=どのように保険料の支払いを行うのか(=積立方法)
資産運用として「リスクの高い保険」を検討する場合、ある程度長期にわたる積立・運用を念頭置いているはずですので、保険料として支払う金額や手段を確認し、自分に合った方法を選ぶことが欠かせません。
運用していく資産の状況は人それぞれですので、「自分が退職するまで積み立てたい」と考える方もいれば、「短期間に集中して払ってしまいたい」と考える方もいます。
また、保険料は「短期間で」「まとめて」支払うほど、支払わなければならない保険料の合計額に割引が効く仕組みになっていますが、その分、一回当たりに支払う額面は大きくなってしまいます。
結果、保険料の支払いが厳しくなり、運用効果が出る前に、解約をすることになるのはもったいないケースです。
特に「リスクの高い保険」では、保険料の支払いの停止や金額の変更は基本的にできないので、自分の現在の資産状況だけでなく、将来にわたり継続が可能かどうかも含めてご検討下さい。
合わせて、運用後に現金化する際のことも確認します。
保険料の支払いを「入口」とすれば、運用後の現金化(解約返戻金や満期金、各種保険金の受取)は、まさに「出口」であり、皆さまにとって最も重要な部分になります。
・お金を受け取る方法・・・満期到来での満期金受取、解約による返戻金の受取etc.
=手続きはどこで、どのようにして行うのか
・最良のタイミングと金額
=運用効果が最大になるタイミングはいつか。それを確認する方法
解約して返戻金を受け取る場合も、満期による満期金を受け取る場合も、それを請求する手続きが必要となります。お金を受け取るためにどのような手続きが必要になるのか、どこに申し出れば手続きができるのか、あらかじめ確認しておくと良いでしょう。
特に、解約して返戻金を受け取るタイプの保険商品については、そのタイミングも確認します。
解約控除が発生する等の理由から、多くの場合、短期間に解約してしまうと運用効果はほとんど見込めません。
また、商品によっては低解約期間(保険料の払込期間中等、解約返戻金が7割程度に抑えられる期間)が設定されるものが存在するほか、様々な特徴をもつ商品がありますので、保険商品ごとにきちんと確認しておきましょう。
理解できなければ「契約しない」という選択
さて、ここまで「リスクの高い保険」について、実際に契約する前に確認しておきたいポイントをまとめました。
しかしながら、近年の保険商品の複雑化・複合化は著しく、説明を聞き、確認をしても尚、どうしても内容が分からない、ということもあるかもしれません。そのようなときにはどうしたらよいでしょうか。
ここで、「投資の神様」とも称される著名な投資家である、ウォーレン・バフェット氏(*10)の言葉を一つ、引用させて頂きます。
Risk comes from not knowing what you’re doing
‐リスクは、自分が何をしているのかよくわからないときに起きる‐
これはすなわち、「自分が理解できないものに投資はしない」という意味になります。
「リスクの高い保険」は保険商品ではありますが、運用・投資の面も強い商品であり、資産運用には「自己責任」が伴います。
制度として、投資系の商品を勧める金融機関や保険代理店、その営業マンには金融商品取引法や保険業法等の法律上の規制があり、それらは原則的に消費者保護のために設けられていますが、実際に投資を行う場合、自己責任が基本です。
「リスクの高い保険」の契約をされる前に、確認すべきことをすべて質問したうえで、なお理解ができないのであれば、率直に申し上げて契約すべきではない、ということになります。
同時に、理解できないことについて、皆さまが罪悪感を感じる必要もないことも付け加えておきます。
繰り返しになってしまいますが、近年の保険商品は仕組みが複雑なものが多くありますので、提案をしている方の知識不足が原因で説明が不十分になることもあれば、そもそも仕組みとして、知識が十分な保険募集人の方でも、うまく説明すること自体、難しい商品も存在します。
さらに、全体として、「リスクの高い保険」を契約される方の高齢者の割合が増えていることも、トラブルが増加している原因と一つと言えそうです。
「勧められたけれども、内容が今一つ分からない」「理解しているか自信がない」と感じたら、「契約(購入)自体をしない」という選択をすることも、自分自身を守るためには必要なことではないでしょうか。
もう一つ重要なことは、なるべく色々な意見を聞く、ということです。
最終的に自分自身で決めなくてはいけないことですが、意見を聞く、いわゆる「セカンドオピニオン」を受けるのは自由です。
特に将来の見通しが難しい、このような金融商品の場合、なるべく多くの意見を聞いたうえで判断する方が、自分自身でもより納得して購入することができます。
皆さまの中で、もし銀行や保険代理店等から「リスクの高い保険」を勧められている方がおられれば、ぜひ契約する前に、これらを確認して頂き、保険選びの参考してもらえましたら幸いです。
*9 金融機関が破綻した場合に一定額の預金等が保護される制度。一般的に「ペイオフ」とも呼ばれます
*10 Warren Edward Buffett(1930年8月30日~)アメリカ合衆国
投資持株会社バークシャー・ハサウェイの会長兼CEO