コラム回心転意
皆さまは介護保険制度で最近大きな見直しがあったことはご存知でしょうか?
①高額介護サービス費の自己負担上限額引き上げ
②補足給付の預貯金要件の見直し
③食費の負担限度額の見直し
以上3つの改正により、多くの介護サービス利用者の負担が増えることになりました。
現在国内で要支援を含めた介護サービス受給者は年間6,000万人を超えています。
支払われた給付額はおよそ10兆円。これは公的介護保険制度が開始された2000年のおよそ3倍です。
既に超高齢化社会に突入している日本。国民に対してより一層の負担を求める制度改正が今後も行われていくものと予想されます。
特に今回の見直しにより、貯蓄や不動産収入等(以下、不労所得)で老後の介護に備えることは不利になるかもしれません。
収入・貯金が多い人を狙い撃ち?
3つの改正は、いずれも収入や預貯金が多い人ほど特に負担が増えるように見直されているのが特徴です。
高額介護サービス費というのは、その月に利用した介護サービスの自己負担額に上限を設け、超過分を払い戻してくれる制度です。
健康保険の高額療養費制度を元に考案されており、内容も同じようなものとお考え下さい。
自己負担上限額は年収(厳密には課税所得)の幅により異なる金額が設定されます。
改正前は44,400円が上限でしたが今回の見直しにより年収約770万円以上で93,000円、年収約1,160万円以上で140,100円へと引き上げられました。
高所得者の場合、自己負担額がおよそ2~3倍に増えることになります。
合わせて補足給付の預貯金要件も見直されました。
介護状態となり介護施設に入居したりショートステイを利用したりすると食費や居住費の負担が発生しますね。
補足給付とは、年金収入等の所得が一定以下の利用者に対してこれら食費・居住費に負担上限を設け超えた分を払い戻す制度です。
高額介護サービス費と大きく異なるのは給付を受けられる条件として預貯金の額も関係してくるということです。
これまでは第1~第3段階一律で単身なら1,000万円、夫婦なら2,000万円以内の預貯金額を条件としていましたが、上の図のように細分化&減額され厳しく見直されました。
なお、預貯金要件には有価証券(株式、債券)や投資信託、金などの現物も含まれますが、生命保険や貴金属、家財、自動車等は含まれないことは憶えておいた方が良いでしょう。
高所得者以外の負担もきっちり増える
「結局お金持ちへの負担が増えただけでしょ?自分には関係ないよ」
と思う方もいらっしゃるかもしれません。
しかしながら今回の改正では高所得者以外の負担もしっかり求める内容となっています。
それが食費の負担限度額の引き上げです。
居住費や施設入所者の一部区分の引き上げは据え置かれたものの、より利用者が多いショートステイの食費負担限度が1.5~2倍程度に引き上げられました。
ショートステイの利用日数平均は月7~14日程度と言われていますので、第2段階の負担上限を利用できる方の場合でも年間で約17,000円負担が増えてしまいます。
所得増や貯蓄だけでは備えにくい時代へ
今回の改正の動きを見る限り、収入や預貯金に余裕がある方への更なる負担を求める流れは今後も加速していくと思われます。
また介護報酬や介護保険料の改定等、介護にかかわる費用負担そのものも確実に増加しています。
「万一に備えて貯金しておく」というのが当たり前の時代から、「貯蓄を増やすことが将来自分の首を絞めることになる」という時代になる可能性も・・・
貯蓄や所得を増やせないなら、どうやって介護に備えるのか?
一つは予防です。
健康診断の定期的な受診で病気の予防に努めることはもちろん、認知症の早期発見も大切です。
認知症は、介護が必要となった65歳以上の方の主な原因として非常に高い割合を占めています。
認知症は自分では気が付かなくてもご家族に異変を指摘されて気づくケースもあると聞きます。
なるべく早く検査・治療を受け進行を遅らせることも立派な予防策の一つでしょう。
もう一つは民間の介護保険で備える方法です。
保険は基本的に貯蓄ではありません。
貯蓄や所得を増やすことで負担が増えてしまうのであれば、その分を保険に回し備えるという考え方は合理的といえるでしょう。
その他にも、例えば住宅購入時にバリアフリーの導入をあらかじめ検討する等の措置も考えられます。
各世代で出来ることをし、既に訪れている介護時代に備えましょう。
※厚生労働省リーフレット