生命保険相談センター

コラム回心転意

筆者:山田 勝徳

2019年03月:生命保険で健康に? 健康増進を促す保険の付帯サービス

NPO法人 生命保険相談センター
理事長
コンサルタント

山田 勝徳 (やまだ かつのり) 日本FP協会認定ファイナンシャル・プランナー
日本モーゲージプランナーズ協会モーゲージプランナー(住宅ローン)

 

昨今、生命保険業界全体として、保険に加入している皆様が契約後も健康的に暮らしてゆけるようにサポートする取り組みが始まっています。(*1)

 

本来、生命保険や医療保険は、被保険者が亡くなったり入院・手術をしたときなどに利用するものです。契約時こそ健康状態の告知があるものの、加入後は保険事故(保険金・給付金が支払われる事由のこと)が起きない限り、その人の健康状態について保険会社が目を向けることはありませんでした。

今回は、なぜこうした取り組みが広まっているのか、具体的にどのようなサービスとして提供されているのかを中心に解説します。

 

 

「健康寿命」とは

いま「健康寿命」という言葉が注目されています。

健康寿命とは、「心身ともに健康で自立した生活を送ることが出来る期間」のことをいい、厚生労働省発表の日本人の健康寿命(2016年データ)は、男性72.14歳、女性74.79歳でした。

 

 

<厚生労働省「第11回健康日本21(第二次)推進専門委員会資料」(平成30年3月)>

 

 

ここで注目すべきは「平均寿命と健康寿命の差」の期間で、すなわち病気や要介護状態などで健康的な生活を送れない期間を指します。
この差が大きいほど国民全体の健康保険や介護保険の利用が増加すると判断できるため、現在世界一の長寿国であり、少子高齢化社会の只中にある日本としては、この差をいかに縮め、社会保障費を抑制するかが命題となっています。

一方で、この問題は生命保険業界にとっても他人事ではありません。日本国内の生命保険契約者数は1億7,302万件(*2)にのぼり、保険会社としても将来の保険金・給付金の支払いを抑制する必要があり、被保険者には加入後も健康に暮らしてもらうような取り組みを行う必要が出てきているのです。

 

 

「加入前」から「加入後」の健康の増進へ

こうした取り組みが広まる以前より、「健康」をキーワードにした制度は既に存在していました。「非喫煙割引」(1年以内にタバコを吸っていない人は保険料が割引になる制度)や「健康体割引」(体格や血圧値等が会社の定める基準内の人は保険料が割引になる制度)などが代表的なものです。多くの保険会社で採用されている制度ですので、皆様の中には既に利用されている方もいるかもしれません。

 

これらの制度は、これから保険に加入しようとしている人にとって非常に合理的な制度ではあるものの、保険に加入した後の健康増進という目的には合致しません。こうした割引を利用して保険に加入するためだけにタバコを止めたり、健康に気をつけたりすることは(もちろん無くはありませんが)通常考え難いことですし、非喫煙割引を適用して加入した後にタバコを吸ってしまっても保険料は上がらないなど、そもそもが加入後の健康状態に着目した制度ではないからです。

 

そのため各保険会社では、こうした加入前の健康状態を重視する制度とは別に、加入後の健康維持のサポートを目的とした付帯サービスの提供等を新たに始めています。

 

 

提供される具体的なサービス・商品

それでは、加入者の健康増進のために保険会社が行っている具体的な取り組みにはどのようなものがあるか見てみましょう。

 

1 自動付帯サービス

加入者(またはその家族)が利用できる医療・健康相談、人間ドックや認知症等の検査機関の紹介等のサービスを、保険商品に付帯して提供しているケースです。

いままでの保険の自動付帯サービスは「緊急時の医療相談・病院検索サービス」や「セカンドオピニオンサービス」といった病気に罹患してしまった後に活用できるものが主でしたが、最近では上記のような、加入者に病気の早期発見を促し、健康維持にも利用可能なサービスを付帯する保険会社も増えてきています。

 

2 健康改善による割引制度

保険に加入した後に加入者が健康を改善させることで保険料を下げる等の制度を設けている保険会社もあります。

例えば、保険加入後に健康診断の数値が改善した場合や、保険加入時にはタバコを吸っていたがその後禁煙した場合を考えて見ましょう。
健康改善による割引ができる保険であれば、改善した健康診断書の提出やタバコを吸っていないことを証明する検査を追加で受けることで、加入時の年齢そのままで非喫煙体や健康体の保険料に設定しなおすことが出来ます。
通常では現契約を見直し、非喫煙体や健康体の適用を受けられる保険に新たに入りなおす必要があり、加入年齢が上がってしまうこと等で思ったほど保険料が安くならないケースも多くなりますが、この制度が利用できれば、年齢が上がった後に入りなおすことなく保険料を安くすることが可能となります。

 

3 IT技術を利用した保険商品

IT技術を活用することで加入者に直接的な健康指導を行う試みを始めた保険会社もあります。

例えば、ウェアラブル端末を加入者に貸与、利用してもらい毎日の歩数を記録し、その数値に応じた還付金がもらえる保険商品の販売や、スマートフォンのアプリを利用することで、日ごろの健康維持への情報提供、認知症予防の簡単なチェックを行う等、ただ付帯サービスを提供するだけではなく、積極的な利用を促すシステムの導入などは、今後も増えていくと予想されます。

 

以上のように各保険会社がこうした制度を設けることで、加入後でも加入者自身の健康への意識をたかめ、健康増進を促す試みが既に始まっているのです。

 

 

保険の「保障」以外にも目を向ける時代

現在の日本の状況を考えれば、先に述べたように今後はこれまで以上に生保業界全体として加入者の健康増進を促す取り組みが本格化してくると予想されます。

それは保険という商品が単に「万一の時の保障」だけではなく、日常の健康維持にも役に立つものになる、という意味で、消費者の皆様にとって良い動きではないでしょうか。

 

一方で、このようなサービスの面でも競争が激化すれば、より広く複雑なサービスが登場することが予想されます。保険選びの際は保障以外の特長にも今以上に目を向けなくてはならない時代が来ている、と言い換えることもできるでしょう。

 

 


*1 生命保険協会「健康増進サポートプロジェクト」参照
*2 生命保険協会「生命保険の動向」2018年版 (かんぽ生命除く)

 

 

NPO法人 生命保険相談センター
理事長
コンサルタント

山田 勝徳 (やまだ かつのり) 日本FP協会認定ファイナンシャル・プランナー
日本モーゲージプランナーズ協会モーゲージプランナー(住宅ローン)
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