生命保険相談センター

コラム回心転意

筆者:理事長・コンサルタント 山田勝徳

2014年09月:自転車保険を考える -自転車事故への備え方-

NPO法人 生命保険相談センター
理事長
コンサルタント

山田 勝徳 (やまだ かつのり) 日本FP協会認定ファイナンシャル・プランナー
日本モーゲージプランナーズ協会モーゲージプランナー(住宅ローン)

自転車というのはとても便利なものです。
皆さんもちょっとした買い物やお出かけ、子供が遊びや塾に行く時などに使っている方も多いはずです。

しかし利用者が増えたことにより自転車による事故も目立つようになりました。特に加害者に求められる賠償責任は、とても大きくなっています。 もし自分や家族が事故を起こしてしまったら・・・万一の時のため、どのような備えをしたら良いのでしょうか。

まずは相手に対する補償を

自転車事故に備える方法としてすぐに思い付くのは、自動車や住宅と同じ様に「保険を掛ける」ということです。 特に他の人(物)に危害を加えてしまった際の補償をまず考えなくてはなりません。

最も適しているのは「個人賠償責任保険(特約)」と呼ばれる保険で、ペットが他人を傷つけた、店の商品を破損した等、 損害賠償を支払う必要が生じた際の補償として加入するものですが、自転車事故で相手にケガを負わせてしまった場合も含まれます。 多くの保険会社によって販売されており、「日常生活賠償保険(特約)」等の名称になっている場合もありますが、同様の商品です。

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「補償額」については各商品とも幅広く、100万円程度までのものから無制限補償のタイプまでありますので注意が必要です。 特に自転車事故の場合、走行中の小学生が歩いていたお年寄りと衝突した事故について1億円近くの損害賠償を認めたケース も有ります。 保険料も月負担で数百円程度とそれほど高額ではありませんから、最低でも1億円以上に設定しておくべきだと考えられます。

また、対象となる「被保険者」の範囲にもご注目下さい。 多くの商品は自分と配偶者、子供まで含まれていますが、中には「自分のみ」「子供のみ」の補償もあるようです。 本当に必要とすべき方が保障されるかどうか、必ず確認が必要です。

「自転車保険」という商品は無い

かつては前述のような個人賠償責任の保障や自転車に乗っていた本人がケガをして入院、通院をした際の保障、 自転車の盗難・破損に対する補償をセットにした「自転車保険」が販売されていましたが、事故・盗難の増加 により採算性の問題から販売停止が相次ぎ、現在「自転車保険」という保険は存在しません。

替わりに交通傷害保険に個人賠償責任特約を付けたものを「自転車向け保険」として販売しているのです。

「自転車保険」という保険はなく、替わりに交通傷害保険に個人賠償責任特約を付けたものを「自転車向け保険」として販売しています

交通傷害保険は、交通に関する事故について主に入院や通院、手術等に対して補償する保険ですので、自転車事故以外(バイクの事故、駅構内でのケガなど)も対象となります。 個人賠償責任特約とセットにすることで、日常生活で危険が生じる状況について多くをカバーできる保険として活用することが出来ます。

個別に加入する必要性

しかしながら、自転車事故への補償を準備する=「自転車向けの保険」に加入する、ということがかえって非効率になることがあります。なぜなら、この「自転車向け保険」と 同じ補償内容を、火災保険や自動車保険、クレジットカードの自動付帯保険など一見すると関連性の無い保険に特約として付けることが出来るケースが多いからです。

損害保険という商品の性質上、同じ補償を二つ加入していても 支払われる金額が2倍になるということはありません。(例外もあります。) また、自転車に乗るからと「自転車向け保険」に加入しても、実は火災保険や自動車保険に特約として付加した方が、補償額などの条件が良かった、というケースもあります。 また、補償の重複を考える場合、自分のケガによる入院や手術なら通常の医療保険で良いという考え方も出来るでしょう。

もっとも、このような別用途の保険に付加する方法にもデメリットがあります。 たとえば主契約になっている保険を解約した場合や、満期が来て消滅してしまった場合、 特約として付いていた補償も切れてしまうということです。特約があるからといって 最初から「自転車向け保険」を選択肢から外してしまうのも考えものかもしれません。

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自転車事故への備えは、自転車が便利で利用しやすいからこそ、しっかりと行っておきたいものです。 前述の例のように未成年であっても非常に大きな賠償責任が発生する可能性もあります。 「自転車向け保険」はその備えとして確実な方法の一つではありますが、加入していた自動車保険や火災保険に元々特約が付いていたことを忘れてしまっていた、 付けられることに気が付かなかった、というと少々勿体無いのではないでしょうか。

「自転車向け保険」をご検討の際には、一度既存の保険の内容を確認して見ることを強くお勧め致します。



i 平成25年7月4日 神戸地方裁判所

ii 加入時に重複保障でないかどうかを確認する告知がある場合があります

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理事長
コンサルタント

山田 勝徳 (やまだ かつのり) 日本FP協会認定ファイナンシャル・プランナー
日本モーゲージプランナーズ協会モーゲージプランナー(住宅ローン)
■筆者からひとこと

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