コラム回心転意
筆者:コンサルタント 廣川晴一
2014年01月:学資保険を活用するIII -受け取り方と税金-
NPO法人 生命保険相談センター
理事長
コンサルタント
日本モーゲージプランナーズ協会モーゲージプランナー(住宅ローン)
新年あけましておめでとうございます。
本年もこれまで同様、ご相談者の立場に立ったコンサルティングを心がけ、また、当コラムなどで積極的に情報をお伝えして行きたいと思いますので、宜しくお願い致します。
さて、昨年から引き続き「学資保険」についてお話をさせて頂いておりますが、今回は満期を向かえ実際に満期金を受け取るときの注意点などについて解説をしていきたいと思います。
学資保険は「請求」するもの
皆様が学資保険に加入するとき、「どうやって」お金をもらうのか、という部分まで考えている方は少ないように感じられます。
というのも、学資保険=貯蓄という考え方が基本になっているため意外にも、満期が来たら自動的に自分の口座に振り込まれる、とお考えの方も少なくないようです。<
実際には、満期になった時のお金や、中学入学時・高校入学時に途中で支払われるお金は、受取人(通常は契約者)から「請求」をして頂かなければなりません。 (終身保険などを利用していた場合は「解約請求」を行います。)
特に入学金等の資金が必要な時期が近い場合は、速やかに請求を行わないといざという時にお金を準備出来なくなってしまう可能性がありますので注意が必要です。 学資保険であれば満期が近くなると各保険会社から通知が来ますので、それを元に請求を行って頂く事ができます。
請求手続きは書面へ氏名や振込先等を記載する程度でそれほど難しいものではなく、必要書類も決して多くはないケースがほとんどのようです。
ただし請求金額が大きい場合などは、印鑑証明などの公的書類を添付する必要などがありますので事前にしっかりと確認しておきましょう。
受け取り方あれこれ
前回のコラムでは、学資保険にも様々なタイプがあることを説明させて頂きました。 どのような商品を選択するかは加入する段階で決めておかなければなりませんが、 学資金の受け取り方法やタイミングについては、実際にお金を受け取る時にある程度決める事ができるようになっています。
例えば、図1のような商品の場合、中学校・高校入学時にそれぞれ進学金を受け取ることができますが、 もしそれぞれのタイミングでお金が不要だった場合、受け取らずに満期まで置いておくことが可能となっています。
据え置いている間は保険会社の中で運用されますので、満期時にまとめて受け取る際、その分の金額が上乗せされ、通常よりも多く受け取る事ができます。
同様に、終身保険を活用していた場合も、資金が必要ない時は解約をせず継続しておくことで、解約した時に戻ってくる金額が増加します。
これらの上乗せ・増加分は、現在の低金利の状況下では預貯金で置いておくよりも利率が高いため効率的と言えるでしょう。
学資保険と税金
さて、このように商品や受け取り方が様々な教育費に備える保険ですが、受け取る際にご注意頂きたい点として、 「税金」の問題があります。
実際に気にされる方は少ないのですが、学資保険の満期金や終身保険の解約金等は課税対象となります(i)。
但し、契約形態によって表のように税金の種類が異なりますので注意が必要です。
所得税が課税されるケースでは、学資金(解約金)を一括で受け取る場合は一時所得として、年金形式で受け取る場合は雑所得として課税対象となります。
例 契約者・学資金受取人が父
満期金を一括で受け取る = 一時所得に該当(他に一時所得になるものがない場合)
I 満期金200万円の学資保険(途中学資金無し)
保険料の合計が180万円
(学資金200万円-保険料180万円-特別控除50万円)×1/2=-15万円
→計算結果がマイナスのため課税対象額は0円
II 中学・高校進学時の祝金45万円、満期金150万円の学資保険
保険料年12万円を18年間支払
中学進学時
{祝金45万-(保険料12万×12年)-特別控除50万}×1/2=-74.5万円
高校進学時
{祝金45万-(保険料12万×15年-既払祝金45万)-特別控除50万}×1/2=-115万円
満期時
{満期金150万-(保険料12万×18年-既払祝金90万)-特別控除50万}×1/2=-26万円
→ 中学・高校進学、満期時ともに課税対象額は0円
一時所得の課税対象は、収入を得た部分から、その収入を得るために必要だった経費(保険の場合は保険料)と特別控除を差し引いて計算されます。
計算結果がマイナスの場合は課税対象が0円となりますので税金は掛かりませんが、 学資金が高額な契約や支払った保険料に対する戻り率がとても高い保険だった場合はプラスとなり、確定申告が必要となります。 現状では学資保険と言えども利率は低く推移していますので、通常は税金がほとんど掛からないとものと言えるでしょう。
一方、契約者と受取人が異なるケースでは、所得税ではなく贈与税となります。
契約者が保険料負担者だった場合、保険を介して受取人にお金を渡す契約だとみなされるからです。
贈与税額=(受け取った金額-基礎控除110万)×税率-控除額
※税率と控除額は金額によって異なる
上記の式を見ると分かるように、所得税の計算上行った保険料(必要経費)の相殺がないため、税金が発生するケースも多く、税額はより高くなります。
受取人が配偶者やお子様になっている契約が該当しますので、ご注意下さい。
年が明け、受験シーズンがいよいよ大詰めをむかえています。 受験生の皆さんには是非ベストを尽くして頂きたいと思いますが、一方でそれを支えるご家族の皆様もご苦労されていることでしょう。
今回は全3回に渡り、教育費に対する備えとして保険という観点からお話をさせて頂きました。
既に加入中の方も、これから検討される方も、少しでも参考にして頂けたら幸いです。
しかしながら、今回の改正は遺族基礎年金についてのみです。
遺族厚生年金などの支給対象についての改正は行われておらず、格差が完全に解消されているわけではないということも覚えておきたいところです。
i 国税庁HP https://www.nta.go.jp/taxanswer/shotoku/1755.htm 参照
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理事長
コンサルタント
日本モーゲージプランナーズ協会モーゲージプランナー(住宅ローン)
■筆者からひとこと
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