コラム回心転意
筆者:コンサルタント 廣川晴一
2013年12月:学資保険を活用するII ~選び方のポイント~
NPO法人 生命保険相談センター
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先月のコラムにおいて、教育費に備える手段の一つとして、保険の活用をご紹介しました。 今回は実際に教育費への準備として保険を用いる場合、何がポイントとなるのか、少し詳しく解説していきたいと思います。
学資金をもらう時期を考える
お子様の教育期間が終わるまでの間に発生する費用は、毎年常に一定の金額ではありません。 特に小学校から中学校、中学校から高等学校のように進学する境目に大きな費用が発生します。 保険で備える場合も、その境目に合わせて商品を選ぶことが重要となります。
学資保険の場合、お子様の年齢で満期を設定しますが、設定できる年齢は商品ごとに17歳~22歳と、幅があります。 満期に至るまでの間に進学金として途中でお金がおりるタイプの学資保険もありますが、それらも含めほぼ全ての学資保険は、 満期に最も多くお金がもらえるようになっていますので(図1)、満期を何歳に設定するかは重要なポイントとなります。
例えば、0歳のお子様を将来大学まで進学させたいとお考えのご両親がいたとしましょう。 高校3年生の時(i) (大学進学時)に最も多額の費用が必要となると想定した場合、その時点に満期を迎える商品を選択するのがベストです。 20歳や22歳で満期を迎える商品では、大学進学時に十分なお金を得ることが出来ない可能性がありますので注意が必要です。
また、終身保険のような、解約する事によって貯まったお金を引き出すタイプの保険であれば、お子様が高校3年生で解約した時に、 十分なお金が戻ってくる商品を選択することになります。 特のこのタイプの保険の場合、保険料を支払い終えた後であれば引き出す(=解約する)タイミングを自由に決める事ができるため、 予定していた時期よりも早く(または遅れて)お金が必要になった場合にも対応できる事が、学資保険にはないメリットと言えるでしょう。(図2)
貯蓄性は十分か?
学資保険にせよ終身保険にせよ、教育費への準備として保険を選ぶにあたってもう一つの重要なポイントは「貯蓄性」です。 保険に対して合計いくら支払い、それに対して戻ってくる金額がいくらになるのか(=戻り率)を確認しましょう。 実は、学資保険と呼ばれる保険の中で支払う保険料以上の金額が戻る商品は少なく、図3のような元本割れを起こす商品が多いのが現状です。 また前述の終身保険にも、解約した際に戻るお金が支払った金額に満たない、元本割れを起こす商品がありますので注意が必要です。
貯めるために支払ってきた金額よりもらえる金額の方が少ない(=元本割れ)という、何とも不思議な商品ですが、 長らく続いた超低金利時代の影響により、保険会社が預かったお金を十分に運用することが難しくなってきたため利率の改訂を繰り返し、 このような商品になってしまったと言われています。基本的に銀行に預けておけば利率は低くても減る事はないため、 教育費への備えとして、敢えてこのような保険を選択する可能性は低いと思われますが、問題なのは、このように元本割れを起こす商品 であるということに気が付かず加入してしまうことがある、ということです。 「ちゃんと確認しなかったのが悪い」という声が聞こえてきそうですが、一概に購入した側が悪いわけではありません。
例えばこのような学資保険に「18歳までに子供が入院した場合に使える医療保障」が付加されていた場合はどうでしょうか?「医療の保障が付いている分、お支払頂く金額よりもらえるお金が少し下回ります。」という説明を受けると、多くの人は納得してしまうのではないでしょうか。しかし実際に計算して見ると、医療の保障の分を差し引いた貯蓄の部分だけを見ても元本割れを起こしており、 貯蓄とは関係の無い保障をつける事で分かりづらくなっている商品も多いのです。
もちろん、「実際に子供が入院した時に助けられた。」という声もありますので、このような学資保険の全てを否定することは出来ません。 しかしながら、前述のように保険に対して支払う金額と戻ってくる金額を確認し、本当にその人にとって有意義な保険なのかを見極める事は必要です。 「貯蓄」を最大の目的として学資保険や終身保険を選択するのであれば、やはり戻り率が100%を超える商品を選択するべきでしょう。
ここまで教育費への準備に使える保険を選ぶ主なポイントを解説してきましたが、実は商品ごとにもより細かい特徴があり、なかなか奥深いものがあります。 全てをご紹介する事はこの場では出来ませんが、今回挙げました、1.お金がもらえる時期、2.どの程度貯蓄性があるか、の二つについては是非覚えておいて頂きたいと思います。学資保険に限らず、自分に合った保険を選ぶ事は難しいことですが、教育費の準備のための保険は、ご自身やお子様の夢を支える保険でもあります。少しでも良い商品を選びたいと思うのは当然の事ではないでしょうか。
(次回は学資保険の受け取り方について取り上げます)
i 子供の誕生日によって17歳か18歳に設定する
NPO法人 生命保険相談センター 当センターコンサルタントとして2000組以上の法人・個人のライフプランや資産運用などに携わってまいりました。常に相談者のお話を親身に聞かせていただき、的確な情報をわかりやすく伝えられるよう心掛けております。
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