生命保険相談センター

コラム回心転意

筆者:理事長・コンサルタント 山田勝徳

2013年10月:本当に怖い、三大疾病 ~悪性新生物編~

NPO法人 生命保険相談センター
理事長
コンサルタント

山田 勝徳 (やまだ かつのり) 日本FP協会認定ファイナンシャル・プランナー
日本モーゲージプランナーズ協会モーゲージプランナー(住宅ローン)

日本人の死因で最も多いのが悪性新生物(がん)です。一説には、日本人のおよそ三人に一人ががんを患うと言われ、 保険に携わる人間として私も日ごろからがんという言葉を強く認識させられています。 三大疾病をテーマにしたコラム最終回は、この「がん」についてお話させて頂きます。

がんとは何か?

いまや「がん」という言葉を知らない人はほとんど居ないと思われますが、 その特徴や種類、危険性を正しく認識している方は少ないかも知れません。 まずは「がん」という病気がどのようなものなのか、簡単にご説明致しましょう。

○ どんな病気か
まず、細胞の遺伝子が傷つくことで正常ではない細胞(がん細胞)が生まれ、腫瘍化します。 がん細胞は、際限なく勝手に増殖し正常な細胞の 正常な機能を奪っていく事で身体機能の機能不全を引き起こすことになります。

○ 原因
遺伝子が傷つく原因としては、喫煙や生活習慣に拠るものが大きいとされており、中にはウイルス感染によって発症するがん(i)もあります。 いわゆる「遺伝」によりがんを患うという説も根強く残っていますが、「身内でがんになる人が多いケースは、似たような生活習慣を必然的に おくってきたからである」と、がんの遺伝に否定的な専門家も最近は増えており、真意のほどは定かではありません。

○ 特徴
がんには「ステージ」とよばれる進行度が設定されています。簡単に言えば腫瘍の根っこがどこまで届いているかを示したもので、 皮膚の表層に留まった状態(上皮内がん)なのか、リンパ節まで到達してしまっている(悪性新生物)かで危険性が大きく異なります。 後者の場合は別の場所に転移する可能性があるため、がん細胞のみを取り除いても完治しない場合があるということが、さらにこの病気を 厄介なものとしているのです。

高死亡数の実態

さて、最初にお話したように悪性新生物は死因の1位となっており、2位以下と比べても死亡数が2倍近くになっているのが分かります。 (別表1)この数値は死亡総数に対して3割近くを占めており、男性は特に高くなっています。

がんは細胞の病気ですから、様々な部位にできる可能性があります。2位以降の疾病は心臓や肺、脳といった特定の部位に限定された疾病となりますが、悪性新生物の内訳は全ての臓器と白血病なども含まれているため、数が大きくなっているのです。 当然、その中でも死亡数が多い部位と少ない部位があり、人の生命活動に直結する気管や肺などや、罹患数自体が多い胃などの死亡数が特に多くなっています。 実際の総患者数と死亡数も比較をしてみましたが(別表2)、やはり死亡数の割合が心疾患、脳血管疾患と比べかなり高い事が分かります。

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近年、がんを患っても生存できる確率が上がってきた、ということも良く耳にしますが、部位によっては手遅れになるまで自覚症状がないものや、場所の問題で完全に治すのが難しいものも多く、死亡数は依然としてトップに君臨しています。

治療コストの問題

こまで示してきた内容から、がんを患うことにより死亡のリスクが大きく上昇することをご理解頂けたかと思いますが、 それ以外にも、がんになる事のリスクとしてお話しなければならないことがあります。それは、治療コストのお話です。

大病の代名詞とも言えるがんという病気に対して、医療技術の進歩は多くの治療方法を生み出してきました。 三大疾病の中で「悪性新生物(がん)」だけにある大きな特徴として、治療方法の数が非常に多い、ということが挙げられます。 代表的なものは以下の通りです。

外科的な手術(開腹手術や腹腔鏡手術など)
メスなどを用いて外から直接がんに対して治療行為を行う方法です 多くの場合主要部分だけではなく臓器の一部または全てを摘出します。

内視鏡手術
外科的な手術の一つですが、開腹行為を行わず内視鏡だけで切除します。 ステージが低い上皮内がんについて行われます。

抗がん剤治療・ホルモン療法
がん細胞の分裂を抑制する薬やホルモン剤を投薬します。 副作用が激しいものが多い事で有名ですが、入院期間が短く済むなどのメリットもあります。

放射線治療
少量の放射線を定期的に腫瘍に照射、がん細胞を攻撃する治療法です。 開腹や臓器摘出などを伴わない反面、放射線の照射によって正常な細胞まで傷つけられる という副作用がありますが、近年よりピンポイントで照射できる技術が発達し、副作用が小さくなってきています。

温熱療法
熱に弱いがん細胞を温めることで死滅させる治療法です。 全身加熱、局所加熱があり、放射線治療との併用で使われることもあります。

先進医療
厚生労働省の定めた先進医療には、がん治療のためのものが多く登録されています。 放射線治療の強化版とも言える重粒子線治療や陽子線治療は有名ですが、 いずれも高額ということと実施医療機関が少ないことが欠点となっています。

これらの治療方法は金額・治療期間・実施病院などが様々で、がんを患った部位などにより適する、 適さないという問題もあるため、がんの治療コストを一概に述べる事は出来ません。 選択肢が多いということは患者にとっては良い事ではありますが、どの治療を選択すべきなのかが分かりにくくなり、 事前に費用を準備しておくことも難しくなるという問題を同時に抱えています。 また、治療が長期間に渡れば、高額療養費制度を活用できたとしても、個人における負担は重くなるばかりです。

先に述べた死亡リスクと治療コスト、がんは三大疾病の中でも特に両方のリスクを考えなければいけない疾病である事はご承知の通りです。 加えて、多種にわたる治療方法を客観的に選択しなければならないという、金額には現れないリスクも存在します。

このようなリスクを少なくするためには金銭面の準備のみならず、 いざという時にどの病院に行けば良いのかを事前に把握しておくことや、日ごろの健康診断の受診など、 自助努力も行いながら備える必要があると言えるでしょう。


i 子宮頸がん。性行為感染症の一つとされ、ヒトパピローマウイルスの感染により発症。

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山田 勝徳 (やまだ かつのり) 日本FP協会認定ファイナンシャル・プランナー
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