生命保険相談センター

コラム回心転意

筆者:コンサルタント 廣川晴一

2013年05月:知って得する?地震保険の仕組みQ&A

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廣川 晴一 (ひろかわ せいいち) 日本FP協会認定ファイナンシャル・プランナー

ある日突然訪れる地震━━━東日本大震災以降今なお頻発する地震についてご心配の方も多いのではないでしょうか。そんな地震に対する経済的な備えとして有効とされる地震保険。 今では多くの人に認知されていますが、その仕組みまではなかなか浸透していないようです。そこで、今回は地震保険について是非知っておいて頂きたい点をQ&A形式でまとめてみました。

Q 地震保険に加入するにはどうしたらいいの?

現在、「地震保険」と言う名称の単独商品はなく、火災保険に特約として付加することで加入することが出来ます。 (単独加入が可能な「地震補償保険」も存在しますが、補償額・仕組みが大きく異なります。)

ただし、全ての損害保険会社が取り扱っているわけではありませんので注意が必要です。

また、地震保険の補償対象は「建物」・「家財」の2種類があり、それぞれ別々に付帯するようになっています。

すでに火災保険に地震保険を付けている方の中には、建物にしか付いていなかった、というケースもありますので、一度確認してみる事をお勧めします。

Q 保険料と保険金額はどうきまるの?

地震保険は支払規模が非常に大きくなる可能性が高い事から、政府による「再保険制度」によって運用されています。 保険料は各損害保険会社に収めますが、支払規模が大きくなればなるほど実質的に国が多くを補償するようになっていますので、 どの保険会社で加入しても補償内容と保険料は基本的に変わりません。

保険料については、所在地・建物の構造等によって異なります。保険金額は、建物は5,000万円、家財は1,000万円を限度として火災保険金額の3~5割で設定されます。 但し、地震保険が想定している全体の支払金額は1兆円~2兆円であり、被害の大きさから2兆円を超えると判断されれば保険金額が削減されてしまう可能性もあります。

Q 実際にいくらもらえるの?

地震保険の保険金支払には大きな特徴があります。 それは、建物(家財)の損害度を3段階に分け、どの度合いに該当するかにより支払う金額を決定する方式を採っているということです。
以下に各度合いの内容を簡単にまとめました。

(i)

全損

建物

主要構造部の損害が時価の50%以上、または建物の延べ床面積の70%以上の消失・流出液状化により1度超の傾斜または30cm超の沈下

家財

損害額が家財の時価の80%以上

支払

契約金額の100%(時価を限度とする)

半損

建物
主要構造物の損害が時価の20%以上50%未満または建物の延べ床面積の20%以上70%未満液状化により0.5度超1度以下の傾斜または15cm超30cm以下の沈下

家財

損害額が家財の時価の30%以上80%未満

支払

契約金額の50%(時価の50%を上限とする)

一部損

建物
主要構造物の損害が時価の3%以上20%未満または床上浸水・地面45cm超の浸水液状化により0.2度超0.5度以下の傾斜または10cm超15cm以下の沈下

家財

損害額が家財の時価の10%以上30%未満

支払

契約金額の5%(時価の5%を上限とする)

主要構造物とは、建物の柱や外壁、基礎などの事を指し、家財には自動車や貴金属、美術品などは含まれません。 また、液状化に関しては制度が改正され、上記のように保険金支払の明確な規定が設けられました。(ii)

なお、ご存知の方は多いかと思いますが、通常の火災保険のみでは地震による火災・津波による被害への補償がありません。 その意味でも地震保険は重要なのです。

Q 損害度を決めるのは誰?

前述の支払金額を決める損害度は、専門資格を持った「鑑定人」が調査・決定します。 実際に地震による被害を受け、保険会社(代理店)に連絡すると請求に必要な手続き・書類の案内を受けると同時に鑑定人が手配される事になります。

鑑定人は基本的に建物の外観により上記三つの損害度のうちいずれに該当するかを判断します。

可能であれば事前に建物のどこに損害を受けたかを確認し、漏れなく伝えられるようにしておくほうが良いでしょう。 また、最近では航空写真を用いて被災地域全体の損害度をまとめて判断する方法を採るケースもあります。

判定された損害度に納得いかない!

上記より、損害度ごとに支払われる保険金額に大きな差がありますので、判定された損害度に納得ができないこともあるかもしれません。 前述の通り、基本的には建物の外観で判断することと、判断するのも「人」ですので、実際よりも損害度が過小評価されてしまうこともあるようです。

また、よくあるケースとして、市町村などの自治体が発行する罹災証明書(住居の被災状況の証明書)の内容と、 保険会社の損害度判定が大きく異なっていることがあり、それにより保険会社の判定に疑問をもたれる事があります。(iii)

これは、地震保険の判定は建物の主要構造物や床などの根幹部分について見ているのに対し、罹災証明書ではその建物の住居としての基本的な機能全体を見ているからです。 よって、例えば罹災証明書では「全壊」に、地震保険の損害度は「半損」になっているということも有り得ます。

損害度の判定に納得が出来ない場合、保険会社に再度鑑定してもらえるか交渉してみましょう。その結果判定が変わる可能性もあります。

いかがでしたでしょうか?冒頭申し上げた通り、地震保険の認知度はかなり高まっていますから、すでにご存知だったという方もいらっしゃることでしょう。もし地震保険を検討中の方に少しでも参考となっていれば幸いです。特に先月、地震保険の保険料を全国平均で約15.5%値上げする旨の申請が金融庁に提出されたという報道もありました。早くても来年の夏以降になる見通しですが、検討は早めにしておいた方が良さそうです。

最後に、実際に地震保険を請求する場合、すぐに保険会社などに連絡できないことがほとんどです。場合によっては長期間自宅を離れざるを得なくなることもあるでしょう。 しかし焦ってはいけません。地震保険の請求期限は被害発生から3年間と余裕があります。請求は落ち着いてからでも十分間に合いますので、まずは現状の対処を優先させて下さい。


i 日本損害保険協会参照(http://www.sonpo.or.jp/)

ii 東日本大震災時まで遡って適用

iii 「地震補償保険」は罹災証明書の内容に準じた支払を行う

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廣川 晴一 (ひろかわ せいいち) 日本FP協会認定ファイナンシャル・プランナー
■筆者からひとこと

当センターコンサルタントとして2000組以上の法人・個人のライフプランや資産運用などに携わってまいりました。常に相談者のお話を親身に聞かせていただき、的確な情報をわかりやすく伝えられるよう心掛けております。

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